PCTJ排気成分の成層圏大気に及ぼす影響
将来航空輸送システムとして予冷ターボジェットエンジン(PCTJ)の開発がJAXA主導で進められています.その一方で,航空産業が環境に与える影響が,研究者・開発者の間で一つの大きな関心事になっています.航空機による排気は,自動車由来のそれと比べて多くはないですが,排出先が地上ではなく,対流圏上部から成層圏であるという点で状況を異にしています.現在開発が進められているPCTJのコンセプトでは,エンジンアフターバーナーにおいて水素燃料を過濃燃焼することが想定されています.そのため,PCTJ排気の中でも水蒸気・NOx・未燃水素が特に重要な化学種であり,これらの環境に与える影響を調べることが必須であると言えます.そこで,我々はアフターバーナーから排出される化学種と成層圏大気の化学種組成の反応モデルを構築し,さらに大気循環モデル・地球システムモデルを組み込むことで,大気科学的視点から,排気の地球環境へ及ぼす影響を調査しています.