2018年8月8日

Rocket

 

現在、人間が宇宙へ行くためにはロケットを使用することが不可欠です。少しでも多くの荷物もしくは人を宇宙まで安全に運ぶためには、ロケットを高性能化する必要があります。ロケットは航空機とは異なり重さの大部分を推進剤が占めています。従って、ロケットエンジンを高性能化し、少ない推進剤で宇宙まで行けるようになれば、より多くの荷物や人を宇宙空間まで運ぶことが可能になります。

ロケットエンジンの種類

ロケットエンジンには,液体の燃料と酸化剤を用いる液体ロケットエンジン,固体の推進剤を用いる固体ロケット,燃料もしくは酸化剤の片方を固体,もう一方を液体とするハイブリッドロケットなどがあります.それぞれの種類には利点と欠点がありますが,一般的には液体ロケットエンジンが高い性能を発揮します.

Momo © 2018 Interstellar Technologies Inc.

 

ロケットエンジンの推進剤

液体ロケットエンジンの中にもどのような組み合わせの推進剤を用いるかによって様々種類があります.日本のH2AやH2B,アメリカのスペースシャトル,ヨーロッパのアリアンロケットなどは液体水素・液体酸素の組み合わせの推進剤を用いています.この組み合わせは非常に高性能を発揮するために各国で使用されていますが,液体水素の密度が小さいためにタンクが巨大になってしまうという欠点も持ちます.また,これらの推進剤は極低温のため,配管内を前もって冷やしておくなど運用も非常に複雑になります.

この組み合わせ以外のロケットも各国では運用されています.灯油を用いたものや,ヒドラジンと呼ばれる燃料を用いたものが運用されていますが,当研究室では次世代のロケットエンジンの燃料としてエタノールを用いることを考えています.エタノールは常温で液体のため貯蔵することが簡単であり,また無毒なため取り扱いも容易です.また,日本で調達することが容易であり,廃棄する際にも特別な取り扱いを必要としないことから試験にかかるコストが少ないなどの利点があります.

ロケットエンジンの推力制御

ロケットエンジンは軽量で大推力を得やすいエンジンですが、一般的に推力を絞ることが難しいエンジンです。月や他の惑星への着陸などに際しては推力を幅広い範囲で適切に制御することが必要となりますが、高効率で安定した燃焼を幅広い推力範囲で実現することは極めて難しい課題です。そこで、当研究室ではピントル型噴射方式と呼ばれる推力制御方式に着目し、種々の噴射条件が燃焼特性等に及ぼす影響を実験的に調べています。 特に実際に燃焼中の燃焼室内部を可視化することで、火炎や噴霧の構造などの光学計測を行っています。

実験装置

下の写真は平面ピントル型噴射方式を採用した矩形流路を持つ試験用燃焼器です。燃焼室側面に光学計測用の観測窓が設置されており、作動中のエンジン内部を可視化することが可能となっています。 現在はエタノールを燃料、液体酸素を酸化剤とした燃焼実験を行っています。燃焼室上面には小型のトーチイグナイタが設置されており、これにより燃焼を開始させます。

試験中の燃焼装置